ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

無読無想
ときに読むのがいやになって、文庫本をザックにほうりこんだまま車窓をながれる木立をながめていた。
読むことによってなにかがわかるということはない、そう知ったのはいつのころだったろうか。
自分ひとりで考えることや、本を隅から隅まで読むことがいったいなにになるのかと思ったりもした。
なにかのためや、知識を増やしてえらぶるのが読書の目的だ、などとやはり考えていたのだ。
あるとき何のためでもないがとにかく本が読みたいと、そのときはじめて読むことが苦痛ではなくなった。
そんな自分に、「莫迦なやつだ」と捨てぜりふを投げつけながら苦笑いがうかんできたりした。
缶ビールをのみ、ときに眠り、うつつに読みふけるあまたある本たちに出会える幸運に多謝する。

4645窓辺の椅子

「スカーペッタ」(上)(下) パトリシア・コーンウェル 講談社文庫 ★★★
険屍官シリーズの16作目になり、上下二冊だから、まあ相当長い話になるわけである。
でもって、マリーノはどうなったかと思いつつ読んでいるとニューヨークで元気にしていることがわかる。
なんとか自殺は思いとどまって、ベントンにも助けてもらっていまでは捜査官に復帰し酒も断っている。
『自分の着ている、イタリアのデザイナーものに見せかけてはいるが、
そのじつ中国製の安っぽいスーツがふいに存在感を放った。
これを着て雨に降られたら、彼の歩いたあとには、イカの墨みたいな黒い染料の筋が残ることだろう。』
アメリカ人からは、中国製というのはこういう評価を受けているのだなあなどと思いつつ、
マリーノもどうやらやっとまともなスタイルで仕事をするようになったと安心(?)もするのである。
そんなときニューヨークで女性が殺され、その恋人に嫌疑がかかるが彼はスカーペッタを指名する。
彼女以外の者とはなにも話さないというので、ケイ・スカーペッタが彼と対面することになる。
殺人事件と、ネットにひろがる彼女への中傷サイトを軸にストーリーは展開していく。
でも、いまひとつ最初のころの緊迫感が伝わってこないのは、本シリーズに慣れたせいだろうか。
事件の解明よりもケイを中心とした人間関係の描写がメインになっているようで、食傷気味だ。
筆者もいろいろと苦労しているのだろうとご推察申しあげますが、プロットがマンネリ化しているのでは。

「昭和史探索 2」 半藤一利編 ちくま文庫 ★★★★
いよいよ激動の昭和がはじまる五年から八年が今回の守備範囲。
まだ日本帝国、つまり明治憲法での治世下であり歴史の大きな転換点をむかえるのでる。
昭和五年のロンドン軍縮会議から軍部の独断専行がすこしづつはじまっていく。
翌年には満州事変が起こり、七年には五・一五事件で犬養首相が青年将校に射殺される。
満州国の建国によって、八年には国際連盟を脱退することになり軍事国家へとひた走ることになる。
思想的な統制も厳しくなり、そんな事件がつぎつぎと…。
『二月二十日のプロレタリア作家の小林多喜二の逮捕、
そして拷問による死が象徴的な出来事であったろうか。
小林の死骸を引き取った作家江口渙によれば、小林の下半身は腹から膝頭まで、
内出血で墨と紅殻を混ぜて塗り潰したような色になっていたし、常の倍以上にふくらみ
皮膚が破れそうな股には、釘か錐を打ち込んだらしい穴が一五、六カ所もあったという。』
田川水泡の漫画「のらくろ二等卒」の連載がはじまったのも昭和六年のことである。
『今日の漫画が何げなく使っているフキダシ(会話のフクロ)、ケリダシ(走る時の土ぼこり)、
タタキダシ(たたいた時の火花)ものらくろが最初であった。』
巷には不景気風が吹き荒れる世相のなか皇太子誕生(昭和八年)だけが慶ばしいことだった。

「街場のアメリカ論」 内田樹 NTT出版 ★★★
わたしたち日本人のアメリカにいだくアンビバレントな感情や気持ちをこう明解に解説する。
『改憲派は「アメリカ人に押しつけられた憲法だから」という理由で憲法改正を主張している。
けれども彼ら自身の政治的立場は東西冷戦以来一貫してアメリカの世界戦略を支持することにある。
アメリカの世界戦略は主にアメリカ的価値の「押しつけ」として遂行されているが、
それを支持する方々が同時に「アメリカに押しつけられた憲法」はいやだと主張している。
逆に日本の左翼は「GHQに押しつけられた」憲法を「国の宝」と護持している。』
それぞれの立場の方々は、押しつけられたから云々は関係がないと弁明するのだろう。
だがそういう理由を強く主張する方が、内容を吟味するより日本人に強く響くことも知っているのだ。
まあ、その場そのときの苦し紛れ的でもあるがこれが意外に効果があるのでつかってしまう。
男女間の次なる文章も構造的に近似していると思えるのだが、どうだろうか。
『みなさんも経験的にはよくご存知のとおり、「そこに何かがあった」ということを信じさせる
もっとも効果的な方法は「それはもうなくなった」と告げることです。
他人にあなたが何かを持っていると信じさせるためには、
何かをあわてて隠そうとする身振りをするだけで十分です。
だから、別れ話のときに、女性はしばしば「もうあなたへの愛がなくなったの……」
という決めの台詞を口にしますが、
それを聞いた男たちは「はじめから愛なんかなかった」
という可能性について吟味することを止めてしまいます(女の人は賢いですね)。』
より高度になれば、わざとらしさを見せてさらなる裏をかくというか、混乱させる手もある。
スポンサーサイト

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/999-c5c04bcd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー